
避妊インプラントとは?5年へ延長された使用期間とFDA承認データを解説
避妊法の選択肢の1つとして海外で広く使われている避妊インプラント。上腕部の皮下に挿入することで長期間の避妊効果が得られる方法として知られています。本記事では、避妊インプラントの仕組みをはじめ、5年延長の根拠となった臨床試験における避妊効果やパール指数、安全性・副反応のデータ、使用期間を終えた後の抜去について、公開されている一次資料や臨床研究をもとに詳しく解説します。

著者 曻 真子
代表取締役
株式会社EVAtech
- 避妊インプラントとは、上腕部の皮膚の下に挿入した器具から黄体ホルモンを持続的に放出させる、長期作用型の避妊方法です。
- 2026年1月、FDAは臨床試験(NCT04626596)の結果に基づき、使用期間を従来の3年間から5年間へ延長しました。
- 延長承認の根拠となった臨床試験では、4年目・5年目にも妊娠例はなく、新たな安全性リスクも確認されませんでした。
避妊インプラントとは?仕組みと使用期間が5年へ延長された背景

避妊インプラントとは、黄体ホルモンを放出する小さな棒状の器具を二の腕の皮下に挿入して使用する、長期作用型の避妊方法です。
挿入された器具からホルモンが持続的に放出され、主に以下の2つの仕組みで避妊効果を発揮します。
・排卵の抑制: 黄体ホルモンの作用により排卵自体を抑える
・精子の進入防止: 子宮頸管粘液の性質を変化させ、精子が子宮内へ入るのを防ぐ
毎日の服薬管理が不要で、長期間にわたり安定した避妊効果を維持できる点が大きな特徴です。
避妊インプラントの代表的な製剤の1つに、エトノゲストレルを有効成分とする「NEXPLANON®(ネクスプラノン)」があります。
アメリカでは3年間の使用が承認されていましたが、2026年1月、FDA(U.S. Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)は4年目・5年目の使用に関する臨床データを踏まえ、使用期間を5年間へ延長しました。
延長承認の根拠となった第3相試験(NCT04626596)は、ネクスプラノンを3年間使用していた18〜35歳の女性399人を対象とした、多施設・非盲検・単群試験です。
対象者は登録時点でネクスプラノンを36ヶ月(±2週間)使用しており、その後、4年目・5年目まで継続して使用した場合の避妊効果と安全性が評価されました。
実際に4年目・5年目の使用でどの程度の避妊効果が確認されたのかについては、パール指数を用いて次に詳しく見ていきます。
臨床試験で証明された5年間の「有効性」と「パール指数」

NCT04626596では、ネクスプラノンの4年目・5年目の使用期間中に妊娠は確認されず、パール指数は0.0(95%信頼区間 0.00〜0.69)でした。
4〜5年目も変わらない高い避妊効果
パール指数とは、100人の女性がその避妊法を1年間使用した場合に何人が妊娠するかを示す数値です。
値が小さいほど、避妊効果が高いことを示します。パール指数は、観察された妊娠数と避妊法を使用した期間をもとに算出されます。
この試験では、4年目・5年目の期間中に妊娠例は1件も報告されず、パール指数は0.0(95%信頼区間 :0.00〜0.69)でした。
1〜3年目の使用期間と同様に、3年間の使用を終えた後も高い避妊効果が維持されたことが示されています。
なお、パール指数0.0は「妊娠する可能性が完全にない」という意味ではなく、今回の試験期間中に妊娠が確認されなかったことを示す値です。
これに先立ち、世界保健機関(WHO)の研究グループが2016年に公表した論文でも、3年間の使用を終えた避妊インプラント(エトノゲストレル放出型)の使用者390人を対象に、4年目・5年目までの継続使用が検討されています。
追加2年間の追跡期間中に妊娠は確認されず、論文では4年目・5年目の避妊効果を100%と報告しています。
長期使用における「安全性」と「副反応」のプロファイル

ネクスプラノンは、5年間の長期使用でも新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。
FDAの延長承認に関する審査資料では、4年目・5年目の副反応プロファイルは1〜3年目に報告されていたものとおおむね同様で、使用期間の延長によって安全性上の新たな問題が生じたとは認められていません。
最も多かった副反応は「不規則性器出血」
4年目・5年目に報告された副反応のうち、最も頻度が高かったのは不規則性器出血(intermenstrual bleeding)で、発現率は5.4%でした。
使用中には、以下のような月経パターンの変化がみられることがあります。
・月経の頻度や期間の変化
・出血量の増減
・一時的な無月経
こうした変化は1〜3年目の使用期間中にも同様に報告されており、延長による新たなリスクではありません。
5年後の管理:自然には消えないため「医師による抜去」が必要

避妊インプラントは体内で自然に分解・吸収される器具ではありません。5年間の使用期間を終えたら、医療機関を受診し、医師による抜去(除去)処置を受ける必要があります。
継続して避妊を希望する場合は、抜去と同時に新しい避妊インプラントへ入れ替える対応が一般的です。
抜去は挿入時と同様、局所麻酔を用いた小さな処置として行われますが、器具の位置によっては摘出に時間がかかることもあるとされています。
使用期限を意識しないまま使い続けてしまうことのないよう、挿入日や抜去予定時期を記録しておくと、適切なタイミングで医療機関に相談しやすくなります。
また、5年間の使用期間中も、定期的に医療機関を受診し、避妊インプラントの状態や体調について確認してもらうことが大切です。
挿入部位に痛みや腫れなどの変化がある場合や、避妊インプラントが触れにくくなった場合などは、次回の受診を待たずに医療機関へ相談しましょう。
避妊インプラントとは正しい知識のもとで選択すべき最新アプローチ

避妊インプラントの5年間使用について、今回の記事で押さえておきたいポイントを整理します。
- FDAは2026年1月、NCT04626596の臨床試験などで得られたデータを踏まえ、避妊インプラントの1つ「ネクスプラノン」の使用期間を従来の3年間から5年間へ延長しました。
- 4年目・5年目の使用期間中に妊娠は確認されず、パール指数は0.0(95%信頼区間 0.00〜0.69)でした。
- 4年目・5年目の副反応プロファイルは1〜3年目とおおむね同様で、新たな安全性上の懸念は確認されませんでした。
- 5年間の使用期間を終えた後は、体内に残ったインプラントを医師が抜去する必要があります。
これらの臨床研究から、ネクスプラノンは4年目・5年目にも避妊効果が維持され、使用期間の延長による新たな安全性上の懸念は確認されなかったことが分かります。
一方で、5年間使用できることは永久に留置できることを意味するものではありません。
使用期間や出血パターンの変化、5年後の抜去について理解したうえで、自身の健康状態や希望に合った避妊方法を医師と相談しながら選択することが大切です。
※本記事で紹介する避妊インプラント(エトノゲストレル挿入剤)は、日本国内では未承認の医薬品・医療機器(自由診療)です。
※本記事は医療関係者向けの情報提供を目的としており、特定の製品の使用を推奨するものではありません。ご使用にあたっては、最新の添付文書をご参照ください。
